第4回 腹が減っては戦はできぬ

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 好きなことを表現するとき「三度の飯より・・」とか「ご飯も忘れて夢中になる」というが、食いしん坊の私は、食べることが優先順位の上位にあるので、これらの言葉はあてはまらない。時間がなくてしっかり食べられないことはあっても、食事をするのを忘れていたことはほとんどない。これから出かけるというときには「お昼は遅くなりそうだからたくさん食べておかなきゃ」と普段よりガッツリ食べる「腹が減っては戦はできぬタイプ」の人間だ。

 4月19日(木) 東京のANAインターコンチネンタルホテルにおいてブランネットワークス株式会社主催により「よい歯と食育推進委員会発足記念フォーラム」が開催された。食いしん坊代表?としてデントウェーヴを配信するブランネットワークスさんに招待された私は、この日も「夕方まで何も食べられないから」と理由をつけて、ホテル内のレストランでコース料理をしっかり頂いてからフォーラムを聴講する事にした。 (よい歯と食育推進委員会について詳しくは よい歯と食育ドットコム http://www.418419.com)

 フォーラムは、パネリストとして「美味しゅうございます」の食生活ジャーナリスト岸朝子先生、鶴見大学歯学部教授で「ドライマウス」の斎藤一郎先生、日本歯科医師会より常任理事の池主憲夫先生、日本栄養士会より専務理事の二見大介先生という豪華なゲストが招かれ「食育における歯科の役割」をテーマにディスカッションされた。そもそもこの会が発足したきっかけとなったのは、平成17年に食育基本法が制定され、平成18年には内閣府により「食育推進基本計画」が策定されたことらしい。パネリストの先生いわく内閣府により策定がされた当初は「なぜ食べることにまで政府が関与するのだろうと疑問に思ったのだが (中略)日本の食生活が乱れているという現実から危機感を感じ協力するに至った」という話しだった。

 食生活の乱れの背景として、岸朝子先生は、戦後の食に対する考え方の変化や我々の啓蒙の仕方に問題があったのかもしれないと指摘していた。現在の日本の実情として、魚の名前がわからない、切り身でないと調理できないという主婦の話しや活きている鮭を見て甘塩か辛塩かと質問する女性がいた話しでは、時折会場で笑いがおこったが「お腹がすいたと保健室に駆け込んでくる子供がいる」「お母さんたちは作らないのではなく、作れないのです」という深刻な現状を聞き、会場にいる参加者全員が「これはただ事ではない」と思ったはずだ。最後に各分野の先生方からの「食に対して明日からできること」でフォーラムは締めくくられた。

 私は摂食嚥下に関わる仕事もしているので、患者指導においても食に関する指導をすることがある。上手く食べられない子供を対象にしているので、多くの場合、咀嚼や嚥下の指導をすることで改善する。しかし、現在の子供たちは、食品アレルギーの問題や家庭の問題で理想的な食生活を送れない現状に直面することもあり、歯科衛生士が関与しにくい問題があるのも事実だ。また、障害児や中途障害者のリハビリなど、十分な知識もなく安易に指導するのも危険がある。

 そこで、帰り道「一般の歯科医院に勤務する歯科衛生士が食育に関われることは何だろう」と考えてみた。まず食に対する直接的な食事指導として、健康な口腔内を維持するための食習慣や食品選びがある。その他にも摂食嚥下に関わる口腔機能の向上、食べるために必要な歯を守ること、補綴物の維持管理など間接的ではあるが、食に関してアプローチできることはたくさんあることに気が付いた。せっかく「食育」というテーマを与えていただいたのだから、自分にできることからはじめたいものだ。

 しかし「食育」については、まだまだ学ばなければならないことがたくさんある。頭を使うにも栄養摂取は必要だから夜食でも食べながら考えることにしよう・・・腹が減っては戦はできぬ「食育」のおかげで、私の止まらない「食欲」に都合の良い言い訳ができた。

歯科衛生士 田樽 ハイジ

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