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2013/10/24

第5回 あなたの歯科医院は安心・安全と言えますか…?

先月は、滅菌と消毒の基礎知識について、お話を致しました。今回は、もう少し内容を深めて、感染管理の考え方についてお伝えします。

皆様は、一日に6人に1人は何かしらの感染の恐れのある患者さんが来院しているのが現実であることをご存知でしたか。一瞬びっくりされた方もいらっしゃるかと思います。皆様のクリニックでは、一人一人の患者さんに治療前に血液検査を行い、各々の患者さんの全身状態の情報を得るということは大変難しいと思います。初診において「問診」を行いますが、患者さんの自己申告の上である情報ということを忘れてはなりません。もしかすると、私たちが知らない何かしらの感染がある可能性があるということなのです。ではどうしたらいいのか。考え方を少し変えてみましょう。

「全ての患者さんに何かしらの感染がある」という観念のもとに普段から対処をすることを心がけることなのです。「すべての患者さんがリスクを抱えている」という考え、血液、体液、粘膜、損傷した皮膚を、感染の可能性があると捕らえることなのです。その考え方を「標準予防策」(スタンダードプリコーション)といいます。医療従事者は、マスク、ゴーグル、グローブの着用を必須とします。そして、患者さんの治療毎にグローブを替えることは必然というべきでしょう。歯科医院の中で、別の患者さんから、スタッフを通じて別の患者さんへ感染させてしまうことを院内感染といいますが、これを引き起こしてしまうと、歯科医院の信頼性の問題にもなりかねません。使用した器具器材の処理の仕方も大変重要になります。

インプラント手術の際に、ガウンを着用する意味は、滅菌領域を確保するだけではありません。自分たちを「バリアー」するという意味があるのです。手術の際に飛び散る血液は、私たちの手首、胸、マスクまで飛んできます。目に入ってしまうと、粘膜であるために感染を引き起こす恐れのあることは大変恐ろしいことです。必ずゴーグルを着用しましょう。歯科医院によっては、患者さんにおおげさな光景を見せてしまうという理由で、なぜかガウンの着用をためらう先生をお見かけします。ご自分だけ着用されて、スタッフには着用させないという不思議な光景も目にします。皆さんの普段の白衣がどれほど汚染されているものか、想像してみてください。タービン切削時の粉砕片、印象材、セメントなどで汚れています。普段の白衣での、「骨を露出させるインプラント手術の介助をする」をすることは、手術の環境としてはふさわしくありません。また、その白衣に血液が飛び散った場合でも、そのまま着替えずに次の患者さんを診ることができますか。正しい環境を作ることは、大変重要なのです。

ガウンだけではなく、私たちの足元も感染から守らなくてはなりません。皆さんは普段からナースサンダルを使用していませんか?サンダルのつま先が出ているものは、器材やガーゼなどの落下による足の爪からの感染が多く、厚生労働省より、「つま先の覆われているもの」が推奨されています。

「もったいないと医療は違います」と私は皆さんによくお話しします。もったいないからと言って、ディスポーザブルグローブを何度も使用し、毎回水洗して、次の患者さんへ使用するという光景を目にすることがあります。この行為は大変危険です。ディスポーザブルグローブは、複数のしわがあります。水洗によってきちんと洗い流している保証はありません。また度重なる使用で、劣化を引き起こし、ピンホールが開いていることで自らを感染さらしている状況を作ります。さらには、もしグローブに前の患者さんの何かしらの薬品が付着していたらどうなりますか?次の患者様に直接触れてしまったら・・。また、グローブを長時間着用すると、グローブ内にも嫌気性の細菌が数多く発生するといわれています。そのようなことから、患者さん毎にグローブを替えることは、医療人としてのモラルに関する重要なことなのです。再度、歯科医院内で確認してみてください。またグローブを着用したまま、「カルテを記載する、電話に出る、パソコン操作を行う」などの行為により、感染経路を作る可能性があります。「ついやってしまう」を改めて注意しましょう。

ゴーグルを必ず着用する

ゴーグルを必ず着用する 

血液はこれほどに飛びます

血液はこれほどに飛びます

グローブ着用をしたままパソコン

ビーカーで洗浄すると効果的である

手術にはガウンを着用する

㈱モリタの血液タンパク分解洗浄剤

つま先の覆われたシューズを履く

次に、使用した器材の処理の仕方についてお話しします。

使用した器材には、何かしらの有機物やタンパク、血液に汚染されています。よく見かける光景なのですが、それらが付着したまま「消毒液」に浸してしまうと、汚染物が器具にさらに凝固して固まってしまう恐れがあります。前回もお伝えしましたが、器材ははじめに、「洗浄」を行うことが大切です。参考までに使用した持針器を、流水下でさっと流したものを、血液のタンパクを浮き出す特殊な薬剤を塗布することによってあらわしたものの画像です。青く染まっている部分が血液のたんぱくです。一見洗い流したように見える器材には、実にこれほどの血液のタンパクが付着しています。

また、超音波洗浄には、使用した器材の有機物などの付着を洗浄する、大変有効な効果があります。 キャビテーション効果があることで、無数の泡のようなものを発生し、器具に衝撃を与え洗浄します。その効力を最大にするためには、なるべくガラスのビーカーなどに器材を入れることを お勧めします。また、器具が痛むということで、インプラントドリルをガーゼなどにくるむ光景を見かけますが、残念ながらガーゼがその衝撃の効果を吸収してしまい、ドリルに効果がないことがわかっています。金属の入れ物なども同じことが言えます。

器具の使用後は、洗浄、消毒もしくは滅菌という流れを必ず守りましょう。

医療の安心安全は、私たち医療従事者のモラルに関わっています。歯科医院の中でのルールをきちんと決め、先生をはじめ、スタッフ全員が同じように守らなくてはなりません。1人でもルールを破る行動を行うと、感染の危険は防ぐことができません。

「私の歯科医院は、自分の治療も安心してできる環境です。」

まずは自分が安心して治療を受けられる歯科医院を皆さんの目標にしてみてください。 次回はいよいよ最終回、予後管理、メインテナンスとまとめになります。

滅菌バックの場合1〜3カ月

染め出すと汚染がよくわかります

カスト 1週間

ガラス容器が効果があります

インジケータを入れて滅菌

こちらは効果があまりありません

プチコラム 「衛生士として、更なる向上をめざしましょう」

 

イラスト

イラスト(イラストレーター KIM)

 

私が歯科衛生士になって、かれこれ25年の年月が流れました。人生の半分まではいきませんが、それほどの月日になっていたことに自ら驚きを感じます。若葉マークの頃から、紅葉になったような感じなのでしょうか。その間にいろいろな形の歯科衛生士を体験してきました。私が初めて歯科衛生士として就職したのは、大学病院の麻酔科です。手術室で点滴を作ったり、全身麻酔の介助をお手伝いしたりと、普通の歯科衛生士さんとは違う道を歩んできました。その時に夕方アルバイトをしていたのは、矯正歯科でした。

その麻酔科時代にインプラント技術と出会い、スウェーデンに勉強に行き、インプラントの外科アシスタントのノウハウを取得しました。その運命的なインプラントとの出会いが、こうして皆さんの前で講演をする今に至っているのです。その後、一般歯科にて本来の「歯科衛生士業務」に携わりました。子育ての間も、講演、執筆、一般歯科。子供を通じて歯科衛生士ではないお母さん方との関わりの中で、多くのことを学びました。30代後半では、なんとあの携帯のドコモにも就職し、3年弱でしたが接客を学びました。あのかっこいい首巻スカーフのスーツが着たかったからです。歯科の世界と全く違うその体験は、何もかもが新鮮で、歯科に戻った時に大きく役立ちました。いかに歯科の世界が狭いのだということも感じました。

その後、本来の歯科衛生士に戻り数年、現在はインプラントセンターと、某総合病院の歯科口腔外科・インプラント科に勤務しています。歯科衛生士の仕事内容は幅広く、皆さんもいろいろな形で歯科衛生士業務に携わっているかと思います。一般歯科、専門歯科、大学病院、大きな規模の病院、保健所、介護、企業など。その中で皆さんは重要なポジションを担っていることでしょう。  医療は日進月歩なのです。昔はこれでいいとされていたことが今は違うなど常識も変ってきています。私たちは常に情報に耳を傾け勉強し、向上していかなくてはならないのです。

歯科衛生士には、認定制度を設けている学会がたくさんあります。私は(社)日本口腔インプラント学会のインプラント専門歯科衛生士を取得しました。(現在はこちらの委員をしております)皆さんも是非、一歩上の歯科衛生士を目指して、そのような認定歯科衛生士制度に挑戦されてはいかがでしょうか? 皆さんの歯科衛生士人生は、まだまだこれからです! 同じような日々の繰り返しでも、日々成長なのです。そして、私がこれまでに出会った人たち、チャンス、それが今の自分を創ってきたのです。これからもいろいろなことを体験、経験されてくださいね。皆様のところの綺麗な紅葉も、もうじきですね。

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