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2013/10/24

第4回 インプラント治療における減菌消毒の基礎知識

歯科医院で使用する器具器材は常に唾液や血液で汚染されており、次の患者さんへその汚染を移行しないように、使用後はきちんと滅菌や消毒を行わなくてはなりません。 そこで、はじめに、滅菌、消毒の指標を示す、スポルディングの分類をご紹介します。

器材の分類
器材の具体例
処理方法

クリティカル
インプラント器材、外科用器材、根管治療用器材
滅菌

無菌の組織や血管内に挿入する器材

セミクリティカル
プライヤー、印象用トレー
高水準消毒

粘膜または傷のある皮膚と接触する器材
咬合紙ホルダー
中水準消毒

ノンクリティカル
歯科用ユニット レントゲンコーン
低水準消毒

傷のない健常な皮膚に接触する器材

このように、インプラント埋入手術に関する器具類や環境は、観血的処置であることを考慮し、本来口腔内には細菌が存在しながらも、骨を露出させることを考えると、「滅菌」の環境が必要です。歯科医院において、「滅菌」は常日頃行う作業ですが、「滅菌」「消毒」「殺菌」「除菌」「洗浄」が混乱している医院を良く見かけます。そこで、それぞれの定義について解説します。

滅菌
・・・
物質中の菌が限りなく無菌であること。微生物の存在する確率が10−6(マイナス6乗)になること。(高圧蒸気滅菌 ガス滅菌など)

 
 
 

消毒
・・・
人畜に対して有害な微生物、または目的とする微生物だけを殺滅すること(薬液消毒など)

 
 
 

殺菌
・・・
微生物を殺滅すること

 
 
 

除菌
・・・
微生物数を減少させること(うがいなど)

 
 
 

洗浄
・・・
対象物からあらゆる異物(血液 体液 有機物)を除去すること。(超音波洗浄など)

 
 
 

滅菌を行う前に必要なことは、「洗浄」です。次の患者さんに、その汚物を持ち込まないためにも、器具に付着している血液や有機物をしっかり落とすことが重要です。洗浄は、消毒とは違います。血液の付着した器具を、洗浄を行わないまま消毒液に浸漬させると、たんぱく質を変性、もしくは固着させてしまう恐れがあります。「洗浄」⇒「消毒」⇒「滅菌」の流れを守りましょう。超音波洗浄機は、その洗浄効果が最も期待できる方法の1つです。使用する洗浄剤は、血液のたんぱく質を分解するものが多く用いられています。ただし、アルカリ性の強い製品を使用すると、器材が錆びてしまうので気をつけましょう。

ビーカーで洗浄すると効果的である

ビーカーで洗浄すると効果的である

㈱モリタの血液タンパク分解洗浄剤

㈱モリタの血液タンパク分解洗浄剤

それでは、現在多くの歯科医院で取り入れられている代表的な滅菌器「高圧蒸気滅菌」について説明します。高圧蒸気滅菌とは、高圧の飽和蒸気のもつ熱エネルギーによって微生物を構成するタンパク質を変性させることにより、微生物を殺滅する方法です。一番多く用いられており、作業も簡単ですが、高温に弱いもの、変形してしまうものなどには不向きとなります。現在の日本の多くの滅菌器は、「重力置換式高圧蒸気滅菌器」であり、庫内には空気が存在します。最近では、庫内の空気を抜き真空の状態にしてから飽和蒸気による滅菌を行う滅菌器(プレポストバキューム式高圧蒸気滅菌器)もヨーロッパより導入されています。空気を抜くことにより、バキュームやタービンなどの空洞の部分までしっかりと飽和蒸気が入り、完全な滅菌ができるので、ヨーロッパの一部の国では、この規準が義務づけられています。重力置換式高圧蒸気滅菌は、本来は器具をそのまま滅菌するようにできていますが、その後の保管を考えると、滅菌バックに入れて滅菌を行う必要があります。少しでも蒸気が器具に当たるように、庫内の容量は40%ほどにすること、器具類を立てて入れること(紙と紙、ビニールとビニールの面が合わさるように入れます)濡れた状態で保管をすると、細菌の汚染を招くため、乾燥をしっかりさせることが必要となります。

プレポストバキューム式の滅菌器

プレポストバキューム式の滅菌器

滅菌バックを立てる。これでも入れすぎである

滅菌バックを立てる。これでも入れすぎである

滅菌バックに入れて滅菌を行っても、滅菌には「滅菌保証有効期限」があります。保管状態により異なりますが、滅菌バックで保管をして、1〜3カ月とされています。なるべく収納の際は重ねず、「がさごそ」と探すような場所への収納は避けます。滅菌バックには、滅菌した日時を記載するようにすると良いでしょう。また、カストの滅菌の場合は、保管期間は約1週間、開けた場合は当日までとなります。

滅菌バックの場合1〜3カ月

滅菌バックの場合1〜3カ月

カスト 1週間

カスト1週間

インジケータを入れて滅菌

インジケータを入れて滅菌

滅菌を行う際には、週に一度は、化学的インジケータ、生物学的インジケータによる滅菌が正しく行われているかを確認する必要があります。テープや滅菌バックの色が変わるものは、あくまでも滅菌工程を通り過ぎた指標に過ぎません。蒸気が当たったことを指標とするクラスのインジケータが要求されます。インプラント埋入手術に使用する器材は、私たちが責任を持って滅菌を行い、感染や事故を防ぐ努力を怠ってはいけません。

次回は、感染管理について、お話致します。

歯科医院の感染管理 常識非常識

今回、参考にさせていただきました、柏井伸子さん編によるこちらの本は、歯科医院に1冊備えておくべきバイブルとなり、大変お勧めです。
参考文献  クインテッセンス出版 歯科医院の感染管理 常識非常識 前田芳信監修 柏井伸子 編

プチコラム「30万円あったら、何に使いたいですか?」

 

イラスト

イラスト KIM(アートパフォーマー)

 

私は、自分のセミナーの時に、唐突に皆さんにこんな質問をすることがあります。「皆さんは、今使えるお金が30万円あったら、何に使いたいですか?」対象者は、セミナーを受講する若い方が多いので、こんなお返事が出てきます。「旅行へ行きたい」「美容に使いたい」「美味しいものが食べたい」「貯金がしたい」「ブランドの服やバックが欲しい」「自分の健康に使いたい」同じ金額でも、その人によって、そのお金の価値観とはこれほどまでに違うのです。また、その人の今の生活環境によっても、当然違ってきます。インプラント治療に要する費用に関して、たとえば「30万」と説明された時に、人によっては、「そのお金があれば、他に必要なことに使いたい」「子供のことでお金がかかる」「30万で自分の歯のように噛めるのなら是非治療をお願いしたい」と、その価値観はやはり違うのです。「ご自分の健康に使うお金に価値を感じる方」が、インプラントを希望する患者さんと言えるでしょう。心理テストなどでよく、コップにお水が半分入っているシーンがあります。さて、皆さんなら、どう見ますか?

「お水がもう半分しかない」     「お水はまだ半分ある」

私が患者さんにインプラント治療を説明する際に、よく60代くらいの患者さんにこんなことを言われます。「私はもう先が長くないから、歯がなくたって、いいのですよ」これは、前者の考えですね。ここで私達の腕の見せ所です。後者の考えに持っていくために、皆さんならどう説明されますか?医院のミーティングの場でも良いです。それぞれ考えてみましょう。「そんなことないですよ。まだまだ美味しいものをたくさん食べて、健康な体を維持して、若々しく、これからの人生を楽しみましょう!人生はここからまだまだあります。」そんな私の人生、もう半分きました。いやいや、まだまだ半分です!

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