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2013/10/24

第12回 次世代のための輝かしい日本の歯科界9:歯科医師のことを、英語ではtooth doctor

歯科医師のことを、英語ではtooth doctorではなく、dentistというのはなぜだろうか。その違いに何か意味があるのだろうか?今回は、日本の歯科の新生のヒントがそこにあるかもしれないということで、考えてみることにする。日本語では、歯科医師というくらいだから、文字通り「歯の医者」という意味あいの言葉であろうことは容易に想像できる。ここで「医者」といってしまうと、どうしても、悪くなったときにだけ駆け込む所という印象を受ける。一方、dentistというと、それは歯の専門家・スペシャリストを意味し、歯に関することであれば、あらゆることに携わるというイメージを生む。つまり、国民からみると、歯のことはすべて相談にのってくれる相手、道案内をしてくれるパートナーのような存在として映るかもしれない。

日米における歯科医師に対する印象は、実際、このような違いがあると思われる。米国では、ファミリーデンティイストといって、家族ぐるみで幼いころから歯科医師にかかる文化がある。近所の歯科医師に、親子とも世話になり、途中、引っ越したとしても、常にかかりつけの歯科医を確保するという習慣は受け継がれる。ファミリーデンティストと子供の関わりは、乳幼児の健診、フッ素塗布、歯並びのチェック、矯正の相談などである。つまり、虫歯にならずとも、成長、予防を通じて、歯科医師と頻繁に、深く、しかも親密に関わり、歯科医師は、成長と健康の維持になくてはならない、人生における当然の存在となっていく。もちろん、虫歯治療は、検診に頻繁にきているから、常に初期の状態で治療することが可能となる。痛みも侵襲も最小限となり、歯科治療への恐怖感なども芽生えずにすむ。おそらくこういう文化背景が大きく作用して、米国において、歯科医師は常に尊敬される、信頼できる、そして倫理的な職業のベスト10に常に入っている。日本の子供の場合、多くが、学校検診で虫歯が見つかってから、歯科医院の門をたたくので、どうしても、困った時のみ、やむを得ず駆け込むtooth doctorっぽくなってしまう。つまり、自分の健康が落ち込んだ状態、苦しんでいる時ばかりに会う存在なので、歯科医師や歯科医療に対するいいイメージも芽生えにくいのかもしれない。また、日本で行われている学校健診は、幼時期にはあまり行われず、小学校でも一度に何百人もの生徒を見て、時間もかけられず、親への説明もできない状況である。これでは、歯科医師自身も、子供たちの健康と成長に貢献しているという実感もわきにくいだろうし、生徒やその家族たちも、歯科検診に対して、敬意や感謝の念を抱く雰囲気には、なかなかならないかもしれない。ファミリーデンティスト文化が定着している米国では、学校歯科健診を見ることはほとんどない。つまり、tooth doctorは患者を相手にするが、dentistは国民を相手にするというようにも解釈できる。歯科医師の見方には、日米で大きな差があるのかもしれない。

もちろん保険制度のちがいも大きく関係しているだろう。米国ではそもそも歯科医療には、皆保険がなく、民間の保険しかない。そして、民間保険は、予防処置であればあるほど、そして初期の治療であればあるほど、カバーする率が高まる。例を挙げると、クラウンは、虫歯を治療せずに放置していた自己責任ということで、カバーされない。カバーされる内容は、幼児であれば3か月ごとのチェック、クリーニング、フッ素塗布、シーランドなどの予防処置である。また、dentistに行くことは、正当な欠席理由として認められるので、米国の子供たちは、学校を休んで昼間に歯科クリニックに通う。Medical and Dentalといって、医科と歯科の治療は対等に扱われる。この点、放課後に歯医者に行く日本の文化とはだいぶちがう。これでは、日本の歯科医院は夕方ばかり混雑することになる。米国では、矯正クリニックなどが、昼間から子供たちで賑わっているのをよく目にする。

もちろん、dentistの役割は、幼児期や成長期にとどまらない。現代の高齢化社会にあっては特に、歯科医師が、いかに、ご高齢の方々の力になってあげられるかが課題となるだろう。逆に、歯科界が、社会に貢献できる大きな機会が与えられているとも言える。歯周病と心臓疾患や関節疾患との関連性などが相次いで報告されていることに表れているように、口腔疾患あるいは口腔の健康と全身の健康の関わりに対する国民の意識は、年々増しているように思う。ご高齢の方々への、口腔衛生指導、往診の充実、または、まったく新しい形の治療形態、医療サービスの創造など、貢献できる道は多いと考えている。

前回のコラムで、国民に歯と口の健康の大切さを理解してもらうため、国民からの評価を得るため、そして、歯科医師の国民へのさらなる貢献を視覚化するために、歯科医療に口腔QOLの評価を取り入れていくのがいいのでは、という話しをした。Tooth doctorからdentistをめざす考え方、つまり、「患者を治す」に加えて、「一生を通じての国民のパートナーとなる」ということも、日本における歯科新生の一つのヒントとなるかもしれない。そして、日本のすべての歯科医師が、dentistであることを誇りに思うことにつながればと心から願う。

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